平成9年度 研究報告 大分県産業科学技締センタw
包埋苗造林における苗保護材に関する研究
−スギ樹皮を利用した包埋種子(シード。ポール)の開発(第3報)一
大内 成司*。諌太 信義**
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材料開発部・大分県林業試験場
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要旨
太研究は,本年度が最終年度であり5平成7年度に,省力的な広葉樹の造成技術をはかろうとする目的で,スギ樹
皮を利岡した包埋種子の播種実験⊥ノが行われたが,発芽率,活着率ともに悪く}現状の技術レベルでは困難であるこ
とがわかった。そこで,種子の代わりに1・2年生の苗木を使用して包埋苗を試作し,平成8年4月に林業試験場の 圃場地のスギ林内と裸地に播き,活着率を調査した.その結果,裸地に比べて照度の低いスギ林内ではj 爆砕樹皮に 赤土を混入したもの82%と麦ずまずの結果を示したが,爆砕樹皮のみは57%にとどまった.日当たりの良い裸地 ではタ 両者とも25%と低い値を示した.これは,春先の乾燥と籍草の繁茂により活着ができなかったと思われる.
そこで,苗保護材の保水性を向上させるためタスギ樹皮に保水材を配合し,平或9年4月に同様に設置した結果, 保水材の効果により,裸地における活着率が前年度の約2倍になった.3カ年の研究により包埋苗を用いた森林造成 技術の方向性が見いだせたと思われる.
1.緒言
本研究は,日田林業地より大量に排出されるスギ樹皮 を用いて,省力的な広葉樹の造成技術をはかろうと平成 7年度から開始された.広葉樹の包埋苗を散布するのは, 台風に強い森林を造成すること,潜在植生の回復を図る ことが大きな冒的であるタ もともと大分県の森林は,シ イ。カシ・タブノキ等の広葉樹の多い稚木林であったがタ スギ。ヒノキの植林が盛んに行われていった.しかし∼ スギ・ヒノキ林は広葉樹林に比べ水分保持能力が低いこ と,根が深く張らないことなどの理由から,土砂崩れな どの自然災害が起きやすい申 そのため,急傾斜地。尾根 にはスギ。ヒノキ林に代えてもとの経木林を造成しよう という動きもある。そこで,本研究ではタ 広葉樹の苗木 をスギ樹皮で保護した包埋貰を散布し,森林の復旧5 ひ いては災害に強い森林の造成を目指すさ
2.研究方法 2.1包埋苗の活着試験
昨年斐の研究では,苗保護材にスギ樹皮とスギ櫛安に 赤土を配合したものを使用したが,両者とも裸他におけ る活着妥が25%と非常に低い結果となり,苗保護材の保 水性に問題を残した2二).
そこで,本年度は,昨年蟹の笛保護材の保水性試験の
結果を踏まえ夕 景も保水性の良かった保水材(無機質系 丁有機質系)を使用することとした。
苗保護材は,スギ樹皮1リットルに保水材を1リット ル配合したものと,比較対象としてスギ樹皮2リットル のコントロールの2種類とした.
苗木は,タブノキ。イチイガシ・ケヤキ。ユリノキの
4確実頁とした.
なお,日乍年度は,苗保護材を包む不織布を生分解性ポ リエステルシートで行ったが,分解性が悪く根の伸長生 長を阻害した懸念があった.そこで,本年度は,天然セ ルロース系の綿花で作った不織布を使用した.
設置は,平成9年4月に林業試験場圃場地の相対照度 50%のスギ林内と相対照度100%の裸他に行った一
2.2 苗保護材の保水性試験
2.1の試験を開始して数カ月経過した頃,裸地に設置し た包埋苗に枯死するものが見られるようになってきたた 軋 苗保護材中の水分を保持できるように,再度,スギ 樹皮と保水材の配合について検討した,
2.2.1スギ樹皮と保水材の配合
全乾したスギ樹皮200gをコントロールとしてぅ それに
全乾にした古紙パルプ(スラソジを含んだもの)を
10,30,50%配合した.また,古紙パルプを50%配合した ものに)高分子化合物の保水材を10,20タ30%配合したも
平成9年度 研究報告 大分県産業科学技術センタ馴 のを200Cさ 50%民主i の恒温恒浸器中にトナ月間入れタ 重 量の経緯変化を測定した¢ スタート時に全ての試験体に 同量の水を加え,飽水状態とした.
3〟 結果および考察 3.1包埋苗の活着試験
平成9年4月に林業試験場の置場他のスギ林内と裸他 に設置した包埋苗の1年後の活着率の結果をTabl el に示 す.活着の判断はタ 台切りした苗から萌芽しタ その芽の 生名枯死による。
Tabl e。1包埋苗の活着状況 単位:(%)
菜が有ったと判断しても良いと思われる。スギ轄安のみ でも活着率がL5憤上昇した理由として考えられることは, 天然セルロース系の綿花の不織布に代えたためだと思わ れる。前回の不織布は,分解性が非常に悪かったため, 春先に根が伸長して不織布を突き破ろうとしても伸びき れず,枯死したものが多く見られた.しかしj 綿花の不 織布は,分解性が良いためき 根が伸長しやすくなったか
らだと推察される。
横寺登別に見るとぅエリノキの活着率が非常に悪くj ス ギ樹皮のみの場合はスギ林札裸地ともに全く活着する ことができなかった.このように,包埋苗を選定する場
合,乾燥にある程度強く,根の伸長生長の旺盛な樹種を 選定することが必要であろう.
スギ林内 裸 地 樹皮+保水材度 樹皮+操 度
タフ十ノキ 75 57 50
イチイがシ ケヤ土
100 50
エリノキ +十 0 14 0
平均 72 62 51 38
Fi g.2 分解の進行した包埋苗
3.2 苗保護材の保水性試験
高分子化合物の保水材を使用する前試験として,スギ 樹皮に古紙パルプを配合した苗保護材の含水率の変化を 測定した一言紙パルプを配合した理由は,スギ樹皮のみ では非常に軽量なた軋包埋苗を設置したとき不安定で ありき 重量増加の役冒をする.また,スラッジが混入し ているので,ある程度の保水性も期待した。
そ刀結果をFi g3に示す.古紙パルプの配合による保水 性給〇変√こは,50%配合したものがタ3帽経過後9087%
を示しき コントロー劇ル:54日3%の約1.7倍であり,ある程 憂の向上が見られた.
樹木が隻長するた釧ニ,土壌中にどの程度の水分が有
■ れば良いフ〕かを示す数値として,PF値し」(慣湯水分 豊)があるF二土壌中の水分はタ土壌掟子や孔隙の大きさ に応じていろいろな力(魚「三)で保持されている。その 土壌粒子や孔接が水を保持している力を水柱高(cm)に換
算し ′ ㌢甘対数値にしたものがPF値である.土壌が飽 まご状態プニ時がPF値:0であり,乾嬢するに従いpF値は 向」二する;PF値:2。7の韓がタ樹木が生長するた釦二義 Fi gさ1痛著した包埋甫
保水′ 輯を配合し∴たもの… ま,スキ稀薄及び裸地ともにス ギ樹皮よりも貢い活着率を示した.昨年度さ 接地におい てはj 活着率が25%であったが,保水材を配合したもの は,51%と約2倍の値を示した.麦たタ スギ樹皮のみの場 合でも38%と1.5皆の値を示した.裸地はタ 礁対照度がは ぼ川0%であり〉 春先から夏にかけて1卜川」強い日差しが
上
当たるが半分の包埋苗が活着したこと忘5 保水材且虜
平成9年度 研究報告 大分県産業糾学技術センタ仙
分かるようにき 保水材を配合することによって,含水率 の低下が緩やかになる傾向にある。配合割合の増加に伴 いブ 若干ではあるが保水性が向上することが分かった. 保水材を30%配合したものは,30日経過後,含水率は 174.9%であり,コントロールの3−2億の値を示した.ま た,10%:14も9%配合したものでも2.7債の値を示して おり,保水材としての効力を十分発揮していると思われ
るe
この保水材を使用した実地試験はj 行われていないが〉 実際に苗保護材として屋外で侵′ 喝すれば,雨による口汲水
もあるので仁裸池での活着率も向上すると期待できる.
4.緒言
平成9年4月にスギ樹皮とスギ樹皮に保水材(無機質 系+有機質系)を配合したもので包埋苗を試作し仁林業 試験場の圃場他のスギ林内と裸他に設置した結果
(1)保水材を配合した包埋苗の方が,スギ林内き裸地とも に活着率が高かった.
(2)保水材の配合う 天然セルロ】ス系の綿花の不織布に変 更したことによりぅ 裸地での活着率が)昨年度の2倍 以上になった,
高分子化合物の保水材を配合した苗保護材の保水性試験 を200C,50%RHの恒温恒湿器中で行った結果
(1)保水材を30%配合したものはク コントロ㌧−ルの3。2債 の保水性を示した.
本研究はヶ 平成7年度から9年度までの3カ年問の研究 でありぅ 初年度の包埋種子から包埋苗への変更等もあっ たが,保水材や不織布等の検討により,かなりの活着率 を示すことができた。現在では,林業試験場の圃場地に 設置した包埋告が,大人の背丈ほどのまで生長しておりタ 包埋苗による森ができつつある。(ぎi g.5参照)
包埋貰を問いた森林造成技術の方向性が見いだせたと 思われる.
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時間(day)Fi g.3 スギ樹皮に古紙パルプを配合した苗保護材の 含水率の緩時変化
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時間(day)
Fi g,4 高分子化合物の保水材を配合した苗保護材の
含水率刀経緯変化
低限必要な水分を± 壌が保持しているときの値でありさ これ以上になるとぅ 水分不足:ニよる枯死が起こるとぎれ ている。PF値:2.7〇時の実漂芳土壌中刀含水率は,± 壌粒径等刀遠いにもよるが約60%といわれているb スギ 樹皮の場合は)土壌宣比べ字」隙も多く比重も軽いため∋
PF憤:2嶋7に相当する含水妥はタ60%よりもかなり高く なると推察される古 このようなことからぅ 古凝ゾルプを
配合しただけでは巨樹塞が生長するための水分量は) 保 持できないといえる.
そこで5 高分子化合物の保水材を, スギ樹皮に古紙バ ルブを50%配合したも刀に,10)20き30%配合し)含水率 〇変化を測定した.その結果をFi g.新二示す,グラフカゝら
Fまg。5 生長した包理路
平成9年度 研究報告 大分県産業科学技術センタ馴
参考文献
1)山本幸雄j 読本信義:大分県産業科学技術センター 平成7年度研究報告書,(1995),p28
2)大内成司∴諌本信義:大分県産業科学技術センター 平成8年度研究報告書,(1996),p28
3)佐々木恵彦他:造林学,川島書店出版,(1994)